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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』42

Penulis: ひなの琴莉
last update Terakhir Diperbarui: 2025-01-22 17:36:04

「あれ、具合悪いの?」

「いろいろあって」

「ダイエットとか?」

「……いや」

なかなか言えなくて苦しい……。

いつまでも隠しておけないのはわかっているけれど、言えない。

「すげぇ細いじゃん。もっといっぱい食べて太らないと」

「…………うん」

気を使って優しい言葉をかけてくれる彼に対して、嘘をついている気がして申し訳ない気持ちになった。

こんな気持ちのままお付き合いしていいのだろうか。

しばらく無言になり、紅茶を飲んで会話を探していた。

「まだ大丈夫なら少し景色のいいところ行かない?」

「はい。ぜひ」

「よし、行こう」

連れて来てくれたのは高層タワー。

東京を一望できるデートスポット。彼は女の子慣れしているみたいだ。私なんかでいいのだろうか。

人も車も豆粒に見える。

男の人と出かけるなんて経験がないから躊躇してしまう。

どんな会話をすればいいのだろうか。

だんだんと夕日に染まっていく空。街にはだんだんと灯りが灯っている。

タイムリミットが近づいてくるのだ。

早く言わなければ……。

私は彼の方を向いた。

穏やかな顔で景色を見下ろしている。

息をゆっくり吸い込んで気持ちを落ち着かせた。あれほどまでに好きだとアタックしてくれたのだから、きっと大丈夫。付き合おうと決めた人を信じようと思った。

「あのね。言ってないことがあるんです」

景色を見ていた彼が、こちらを向いた。

「ん? なに? なんでも言って」

私は一つ、コクリと頷いた。

「……私、心臓の病気があるんです……」

「…………え?」

予想以上に驚いた顔をされたから、どんな言葉を続ければいいかわからなかった。

急に恐怖心に襲われる。

彼は、どんな言葉を投げかけてくるのだろう。震える身体。怖くて心臓がドキドキと奇妙なリズムを刻んでいた。

「じゃあ……そういうことできないの?」

予想外の質問に答えを返せない。

年頃の男女なのだからそういう関係になってもおかしくはない。

だけど、大事なことを打ち明けたのに一番に聞かれたのがそれだったのは、ショックだった。

――体調は大丈夫なの?

とか、

――長く生きられるの?

とか。

私をいたわるようなことを言ってくれるのだと思っていた。
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